園庭について




3月から4月にかけて園庭のリニューアルを行いました。樹木を新たに20本以上植え、三輪車の周回通路と園庭の中心にウッドデッキを設置しました。園庭のリニューアルを行う上で参考にしたのが、「なぜ誰もがマツダスタジアムに魅了されるのか?設計に隠された驚きの7原則とは」というタイトルの記事です。マツダスタジアムとは、昨年セリーグ2連覇を決めた広島東洋カープの本拠地で、2009年にオープンした球場です。ここに書かれている7原則は、こども環境学会代表理事も務めておられる建築家の仙田満氏の影響を受けたものです。仙田氏は保育園の設計もされており、私も以前に保育学会でお話を聞いたことがあります。仙田氏はもともと公園や遊具の設計を数多くしてきていたこともあり、講師時代には学生に遊具を造らせて、実際に幼稚園に持って行かせ、子どもたちに遊んでもらうというワークショップをやっていたそうです。子どもというのは素直なもので、遊ばれる遊具と遊ばれない遊具がはっきりと分かれるそうで、この違いはいったい何なのかを研究した結果導き出されたのが、マツダスタジアムにも取り入れられた7原則です。



①循環機能があること
②その循環(道)が安全で変化に富んでいること
③その中にシンボル性の高い空間、場があること
④その循環に“めまい”を体験できる部分があること
⑤近道(ショートカット)ができること
⑥循環に広場が取り付いていること
⑦全体がポーラス(多孔質)な空間で構成されていること



この7原則は、園庭作りにも大いに参考になりました。先週から新しい園庭で子ども達が遊び始めましたが、職員曰く子どもたちの遊び方がこれまでと大きく変わったようです。この7原則にそって、当園の園庭を整理したいと思います


①循環機能があること
循環とは、「ひとめぐりして、もとへ戻ることを繰り返すこと。」これは、今回設置した周回通路が当てはまると思います。記事の中にも「遊具の研究の中で、行き止まりがあると基本的に子どもはそちらの方向には行こうとしないそうです。ずっと先まで続いているような循環機能があると、自分の行動に制約がなくなったように感じ、人はつい動きたくなる」と書かれているように、子どもたちが同じルートをぐるぐる回るのを楽しんでいるように見えます。




②その循環(道)が安全で変化に富んでいること
記事中には、「これも遊具の研究の中で、子どもは起伏があったり危険性を感じる場所を避けて、安全に動ける循環動線を見いだし、そこを基本として動くようになるようです。もちろん、それを踏まえた上でどこかに寄り道したり、見誤って危険な経路を通ってけがをしてしまうことはありますが、そういった経験も踏まえて安全な経路を通るようになる。人間の根源的な本能でリスクを避けようとします。さらには、その循環経路が変化に富んでいることで、何度も繰り返し、通りたくなります」とあります。当園のトラックは三輪車等の通路にもなりますので、コンクリートで平らに作られています。大型遊具や築山といった冒険心をくすぐるゾーンがある中で、こういった安全な場所も大切です。また、トラック自体には変化はありませんが、その場所によって風景は変わります。トラックの周りには様々な木々が植えられているのも大きな要素です。




③その中にシンボル性の高い空間、場があること 園庭のシンボルとなる空間を一つあげれば、やはり築山でしょうか。園庭の真ん中に位置し、どこからでも見ることができます。子どもの発達を考えると、登るためには様々な力を獲得していることが必要で、登ることができると上からの景色をながめることができ、優越感が味わえます。




④その循環に“めまい”を体験できる部分があること

めまいについては記事中に「“めまい”というと分かりづらいですが、自分の感覚・知覚を揺るがすことで、その体験自体が遊びになるというものです。」と書かれています。感覚・知覚を揺るがすといえば、大型遊具がそれに当たるでしょうか。ここで遊ぶことによって非日常的な感覚体験ができる、つまり”めまい”体験ができるわけです。





⑤近道(ショートカット)ができること
トラックを通れば1周できますが、その間にも近道や寄り道ができるルートもあります。子どもたちの中には、三輪車を荷物の運搬のために使っている子もいます。




⑥循環に広場が取り付いていること
園庭をリニューアルしてから、子どもたちはそれぞれの遊びごとにゾーンに分かれて遊ぶようになったように思います。それぞれのゾーンは、トラックの周りに配置されています。ごっこ遊びを楽しめるゾーン、土で遊べるゾーン、ウッドデッキでゆったりできるゾーンなど、それで満足のいくまで遊びに没頭できます。





⑦全体がポーラス(多孔質)な空間で構成されていること
ポーラス(多孔質)については記事中で「これは、内外をつなぐ穴が無数に空いている構造だという意味です。マツダスタジアムに実際に行ってみると分かりますが、外側からはフィールド全体は見えないまでも、その雰囲気は透けて見えるように設計しています。スタジアムという空間を閉じて、街の中で独立した存在にしてしまうのではなく、見た目にもオープンにすることで、街の中に溶け込み、都市への開放を促しています」と説明されています。当園の園庭は、東は駐車場から、南はグランドゴルフ場から、西は線路を走る電車から、そして北は園舎からと、どこからものぞき込めることができます。保育園を設計する際にも重視していたことが、「既存の風景に園舎をいかに溶け込ませるか」ということです。町の中の一部だということを感じることのできるオープンな視界があることも、園庭の要素として大事な部分です。


以上が7原則です。
まだまだ物足りない部分もありますが、園庭がもっと森化していくように、子どもたちが毎日遊んでも飽きない魅力的な園庭をもっともっと目指していきます。




 

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