プロジェクト・メソッド

 デューイの高弟に、ウィリアム・キルパトリックという人がいます。「プロジェクト型の学び」を、デューイと共に最初い体系化した人として知られています。「プロジェクト・メソッド」と呼ばれるこの方法論は、その後の「プロジェクト型の学び」の原型となりました。キルパトリックは、「目的ある活動」こそが、学びを導く根本原理であると主張しました。教師からただいわれるがままに勉強するのではない。自らの目的を持って学びを続ける過程でこそ、子どもはまさに「自ら学ぶ力」を育んでいくのだと。
 「きのくに子どもの村学園」という、「プロジェクト型の学び」を中心とした有名な学校があります。この小・中学校では、授業を文字通り「プロジェクト」と呼び、園芸、工作、地域社会の研究などを中心にした学びが進められています。読み書き計算を中心としたいわゆる「基礎学習」も行われてはいますが、それもまた、プロジェクトの中で、あるいはプロジェクトと関連させて扱われます。この学校の創設者、堀真一郎氏はいいます。「世間では学力の「定着」には反復練習が不可欠と考える人が多い。しかし、これこそが子どもたちから一番嫌われている考えである。そして時間と労力の浪費であり、いわゆる勉強ぎらいが増える原因なのだ。むしろ私たちは、基礎学習で学んだことをプロジェクトや普段の生活で利用する方を大事にする。」ここにおける教師の役割は、「教え込む」ことから、これまで述べてきたような「学びを支え導く」ものへと転換しているといえるでしょう。しかし言うまでもなく、デューイやキルパトリック、あるいは堀氏が言うような「プロジェクト」は、子どもたちの好き勝手に任せる”教育”の放棄を意味するものではありません。教師は、子どもたちの学びのプロセスが十分意義深いものとなるようコーディネートし、そしてまた、その結果に責任を持つべき存在として位置付けられているのです。
 ポスト産業社会の萌芽が現れ始めていた20世紀初頭のアメリカで、デューイやキルパトリックに代表される「新教育」思想が生まれたのは、ある意味において当然のことだったといえるでしょう。画一的・大量生産型の教育からの脱却を目指した彼らの行き着いた教育のあり方は、これまで述べてきたような、学びの「個別化」「協同化」「プロジェクト化」の融合だったのです。

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