乳幼児教育は「裏の道」

よく、集団心理といって、「共感」が意識されることなく伝染していく場合があります。「共感」とは、他者とつながりを持つうえで大切な能力なのですが、そのためには相手に意識を向け、事態をしっかり理解し判断することが必要になります。それは脳の前頭前野の役目だと言われていますが、この部分が十分に発達していなければ、「共感」によって、行動までもそっくり真似してしまうのです。他者に対して共感するとき、人が他者と対するとき、即座に好意などの感情的な親近感をもたらすものが「裏の道」とすると、より洗練された社会的感覚をもたらし、適切な反応を導き出すのが「表の道」です。ミラーニューロンの働きは裏の道で、この能力は人と人とがうまく同調するために必要です。同調には、お互いが考えるのではなく、非言語的ヒントを即座に読み取って円滑に反応する必要があるからです。一方、社会における自己存在の位置の自覚、社会の潮流の把握、必要な情報を収集して冷静に解決策を練る能力は表の道であり、それを支えるのは教育・学習によって得られる多くの知識です。社会的知識が能力を発揮するには、これら裏の道と表の道、2つのシステムが補い合う必要があります。しかし、表の道は、裏の道がきちんと整備されなければ、開通が困難になります。学校教育では、社会的認知能力に役立つ知識である表の道を子どもたちに与えるためにあると言われ、乳幼児教育は、豊かな人間関係を築くための社会脳(社会の一員であるという意識)である裏の道を育てる期間ともいえます。ですから、乳幼児期こそ、生きた人間同士が顔と顔を直接向き合わせることが必要になるのです。(藤森平司著「保育の起源」より)


最近になってやっと乳幼児教育に注目が集まるようになりましたが、これまでは表の道である学校教育の陰に隠れていたように思います。


しかし、表の道である学校教育を支えているのは、裏の道である乳幼児教育であるということ、そして似ているようで全く別のものであるということが、この文章から理解できます。

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