脳科学から考える保育

科学雑誌ニュートンで「脳研究の今」という特集があり、研究者たちが脳解明の最先端について解説していたことがありました。脳科学の研究成果が色々な場面に採用され始めて久しくなります。育児、保育、教育分野でも盛んに脳科学が議論されています。たしかに、子どもたちはいろいろな経験を脳で感じ、脳で覚え、次の行動を脳で考えます。現在、「心で感じる」ということを「心臓」で感じると思っている人は誰もいません。「胸が裂ける」「胸がすく」「胸がつぶれる」「胸が塞がる」「胸に一物」「胸に迫る」「胸に畳む」「胸を躍らせる」「胸をなで下ろす」など、「感じる」という領域に対しては胸という語が使われており、対して「頭で考える」「頭を使う」というように、「考える」領域については頭という語が使われていますが、感じたり、覚えたり、考えたりという営みはすべて脳が行っており、その違いは脳の部分の違いであって、心臓は血液を全身に送り出す臓器であることは子どもでも知っています。しかし、子どもでも知っている脳の働きではあるのですが、実は先端の研究者たちでも本当の脳の働きは解明できていないのです。ですから、単純に脳がこうだからこうしなければならないというようなことは言えません。例えば、脳が早く完成するので、小さいうちにいろいろなことを教えなければならないとか、乳児の頃に英語をやらないとバイリンガルの脳にならないで後で苦労するとか、早期教育に結び付けてしまう人がいますが、そんな簡単な話ではありません。人間は、もっともっと複雑なものなのです。(藤森平司著「保育の起源」より)



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