共同保育

「よく泣く一方で、人間の赤ちゃんはよく笑います。母親以外の共同保育者が多いのも、人間の赤ちゃんの特徴です。泣いたり笑ったりして彼らの注意をひき、とくに天使の笑顔で彼らの愛情を獲得するのです。育児経験のない人であっても、赤ちゃんをあやす時の音声や抑揚は同じです。」
ゴリラが専門の霊長類学者であり京都大学総長の山極壽一さんがこう語っています。「共同保育」のために、赤ちゃんは多くの養育者の中で育ちます。養育を担った人はさまざまに工夫して赤ちゃんをあやそうとするでしょう。それが子守歌の起源になったのではないか、身体機能が未熟な状態で生まれた赤ちゃんの存在が人間の音楽能力を発達させたのではないか、と山極さんは考えています。赤ちゃんは言葉の意味はわかりませんが、音声の陰にある保育者の気持ちを受け取り、抑揚から伝わる心情を受け取ります。あやす音声が子守歌となって波及したとき、そこにあるのは小さな存在への優しいいたわりの心であり、赤ちゃんにも大人にも「他者への共感」を育んでいきました。こうしたことが子守歌の普遍性へつながっていったと考えているようです。(保育の起源より)




以前、山極さんがテレビでの対談の中で、「これをやらなかったら我々人類はいないだろうという、人類の一番大きな業績は何だと思うか。」と聞かれ、こう答えられています。
「食物を共有することと共同保育をすること、つまりあらゆる生活が『ともにある』という心によって作られていること、これが人間としての出発点だと思っている。これがなかったら人間にはならない。そして近隣関係も大事。家族は1つだけではダメ。複数の家族が集まって共同生活をしないと家族というものは存立できない。」


人類は本来、母親や父親、祖父母だけでなく、複数の家族が一緒になって一人の子どもを共同保育していたのです。しかし、最近の日本では核家族化や少子化の影響で、母親に子育ての負担が行き過ぎています。そういった状況にある今、保育園の果たす役割がとても大きくなっています。昔は、保育所は母親の代わりをする場でしたが、今は「社会」としての役割が重要だと言われています。人類が本来行ってきた「共同保育」、一人のこどもをみんなで育てるということを、保育園が中心となって行っていかなければならないと思います。





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