哲学する赤ちゃん

10年ほど前にベストセラーとなった、アリソン・ゴプニックの著書「the philosophical baby(哲学する赤ちゃん)」には、進化的に子どもと大人との間に一種の役割分担が出来上がっているということが書かれています。

「子どもはいわば、ヒトという種の研究開発部門に配属されたアイデアマン。大人は製造販売担当です。子どもは発見し、大人はそれを実用化するのが仕事です。子どもは無数のアイデアを提案しますが、実際はほとんどのものは使えません。実行可能な案はほんのわずかです。それでも、斬新な変革能力、それをもたらす創造力と学習能力で競えば、負けるのはきっと大人の方でしょう。」

保育園で子どもと日々過ごしていると、子どもの発想やふとした言葉にビックリさせられます。この本が示しているのは、それを生かすか殺すかは周りにいる大人にかかっているということでしょう。

イギリスのある調査では、優れているプレスクール(保育園や幼稚園)に共通する特徴が2つあるようで、その一つが「共に考え、深め続ける保育者のかかわり」だということです。子どもの発想や言葉を保育者がスルーせずに、保育者の専門性を発揮して、深め発展させていくことが大切なのだと思います。


ただ、子どもの言葉や行動、発想の自由さは、時として大人にとって煩わしいものであったり、面倒臭いものであったり、大人の社会を邪魔するものであったりすることがあります。忙しい大人には、その子どもの発想に付き合う暇はないかもしれません。その結果、残念なことに、子どもの自由な発想の多くは、無視されたり、制止されたり、怒られたりして、日の目を見ることなく消えてしまうのです。赤ちゃんの脳は、想像することと学習することに特化するために、大人の脳よりたくさんの神経回路があるのではないかと言われています。そのために、大人より可塑性や柔軟性がはるかに高く、変化をよく受け入れます。それは、新しい社会にいち早く順応して、その中で生きていく力をつけていく必要があるからでしょう。

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