共食

山極さんは、人類は利害が矛盾する家族と社会を両立できる唯一の生き物であり、それを可能にしているのが共感力であると言っています。その共感力が、分配、援助、協力を可能にし、その結果、集団が大きくなっていきました。その中で、贈与や互酬性という概念も生まれてきたと指摘されており、食物を分配する行動は、もともと母親あるいは育児をする大人から子どもへという行動で、それが大人と大人の間にも普及したものと言われています。サルは基本的に食物を分配しませんが、類人猿は分配するのです。しかも、強い者が食物を独占するサルと違い、食物が力の強い者から弱い者に分配されます。その中でも、人類は類人猿と全く比べものにならない高い頻度で食物を分配しています。人間は積極的に他人に与える。すごく気前がいい。それは食物分配が相当、人間関係の作り方や維持の仕方に影響を及ぼすものだからと考えられています。食物を間に置いて両者が平和的な関係を結ぶためには、「あなたと私は食べ物を一緒に食べあう仲間なんです」という互いの共感を土台にした「共食」が基本になります。利害関係という前に「共にいる」ということが非常に大きい。「共に資源を分け合って食べます」という意味なんです。当然、そこには共感というものが欠かせません。相手がどういう気持ちかを読む必要があります。人間はその共感力を高めることで、家族からムラ、そしてもっと大きな集団へと、大きな社会をつくることができるようになったのです。(保育の起源より)

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