学びの個別化

 では、「学ぶ力」としての学力を、私たちはどうすればできるだけ全ての子どもたちに十分に育んでいくことができるでしょうか?以下3つのキーワードを軸に論じていきたいと思います。一つは、「学びの個別化」、二つ目は「学びの協同化(協同的な学び)」、そして三つ目は「学びのプロジェクト化(プロジェクト型の学び)」です。より良い学びの本質を、私はこれら三つの学びの融合型として以下に描き出したいと思います。
 「学びの個別化」から始めましょう。今日の学校では、初等・中等教育を問わず、ほとんどの場合、学習内容や学習進度がほぼ決められています。九九は小学校二年生で学び、一次方程式は中学一年で、平方根は中学三年で、といった具合です。いつ何をどのように学ぶのか、かなりの程度決められてしまっているのが現状です。こうした頑健なシステムは、繰り返しますが全ての子どもたちの学力を保障するために重要なものです。しかし、その一方で、いつ何を学ぶかがかなり決められてしまっている学びのあり方は、考えてみればひどく非効率なことです。子どもたちの興味・関心はそれぞれ異なっているし、学ぶスピードも、また自分に合った学び方も、本当は人それぞれ違っているはずだからです。一律に”やらされる”勉強は、子どもたちの学習意欲を削いでしまう大きな要因にもなっているでしょう。
 心理学者ハワード・ガードナーは、人間の「知能」は単一のものではなく、大きく八つくらいに分けて考えることができるといっています。詳しい説明は割愛しますが、①言語的知能、②論理・数学的知能、③空間的知能、④身体運動的知能、⑤音楽的知能、⑥対人的知能、⑦内省的知能、⑧博物的知能、の8つです。ガードナーによれば、ほとんどの人がこれら8つの能力を全て持っていますが、そのうち優れているのは、たいてい2つか3つだということです。そして、それぞれの能力の特性に応じて、学び方にもまた向き不向きがあるといいます。これは常識的に考えても明らかでしょう。黙々と本に向かって学びことが向いている人もいれば、人とコミュニケーションしながら学ぶのが向いている人もいる。要するに、効果的な学びの方法は、人によっても、またその成長段階においても、時と場合によってそれぞれ異なっているものなのです。同じ内容を、同じ順序、同じペースで、また同じようなやり方で勉強させるのは、その意味でやはり非効率的な方法と言わざるを得ないのです。

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