学びの共同体

 では、この「協同的な学び」、具体的にはいったいどのように行われるものなのでしょうか?日本でおそらく最も有名な「協同的な学び」は、佐藤学氏が主唱している「学びの共同体」でしょう。協同的な学びを中心とした、個々人を尊重しあう民主主義的共同体としての学校づくりの実践です。ここにおける「学び合い」を成功させるために、佐藤氏は明確化すべき4つのポイントをあげています。①グループをどのように組織すべきか、②いつグループ学習を導入すべきか、③いつグループ学習を終えるべきか、④グループ学習の間に教師は何をすべきか、の4つです。
 ①の「グループをどのように組織すべきか」については、経験的には男女混合の4人を基本とするのが好ましいと言われます。②の「いつグループ学習を導入すべきか」については、2つの機会があります。1つは、前章で論じた「学びの個別化」を「協同化」する時。それぞれが学んだものを持ち寄って、訊ねあい教え合う機会をつくることで、いわば学びの効率性を高めるわけです。もう一つのより重要な機会は、「背伸びとジャンプのための協同的な学び」の機会です。学びというのは、実は少しずつ進んでいくというよりも、意味ある経験の蓄積を土台に、ある時「ジャンプ」の機会が訪れる、そのような仕方で進んでいくものです。従って、「学び合い」の機会は、例えば生徒たちのつまずきや伸び悩みがあった時、あえて協同で考え合う機会を作ることで、この「意味ある経験の蓄積」を生み出す可能性を広げることを志向します。一方的に教えられるのではなく、互いに考え合うことで、「あっ、わかった!」といえるような機会を作り出すわけです。行き詰まった時、一人で考えていてもなかなかそこから抜け出せないということもあるし、一人でやっているだけではマンネリ化するということもあるからです。そこで「協同的な学び」は、それぞれが学んだものを持ち寄って学び合う機会を作ることで、学びの相互触発、相互作用を起こすのです。
 ④の「グループ学習の間に教師は何をすべきか」については、2つのことが重要だと言われます。まずは、「学び合い」に参加できない生徒に対するケア。そしてもう一つは、「学び合い」が起こりにくい状態に陥っているグループに対するケアです。これは、逆にいうと、全ての子どもとグループが「学び合い」を成立させていると判断できれば、過度に介入せず生徒に任せておいた方がいい、ということでもあります。そこでこそ、まさに自ら学ぼうとする学びが起こっているだろうからです。その意味では、今日教師に求められている力量は、一斉授業の上手さというより(あるいはそれだけでなく)、一人ひとりの学びを支え導くとともに、「学びの協同化」をファシリテート(促進)する力だといえるでしょう。

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