プロジェクト型の学び

 「個別化」、「協同化」に続けて、最後に学びの「プロジェクト化」について論じたいと思います。先述したように、学びの「個別化」と「協同化」と「プロジェクト化」は、どれも密接に関わり合っていて、本来区別されうるようなものではありません。しかしあえて区別して論じるとするなら、「個別的な学び」と「協同的な学び」が、どちらかといえば「何を学び取るか」が教師によってある程度具体的に決められているものとするなら、「プロジェクト型」は、それがそれほど詳細には決定されていないものといえます。それは例えば、鶏小屋を建てるプロジェクトかもしれないし、宇宙の成り立ちを調べることかもしれません。その過程において、子どもたちはいわば学び方を学びつつ、自ら思考し課題を探究・解決していく経験を積んでいくのです。
 このプロジェクト型の学びを全面的に採用して教育実践を行った先駆者が、前にも触れたアメリカの教育哲学者ジョン・デューイでした。「学校と社会」という本の中で、デューイはこう言っています。子どもたちには、本来4つの本能的欲求のようなものがある、と。一つは、物を発見したいという欲求、二つ目は、物を作りたいという欲求、三つ目は自らを表現したいという欲求、最後にコミュニケーションへの欲求です。こうした欲求・衝動を無視して、子どもたちをただ机の前に座らせ、決められたカリキュラムを決められた通りに進めていくなんて、あまりに不自然だし非効率的すぎる。さらに悪いことには、その過程で、子どもたちがせっかく持っている、これらの本能的な力もしばしば奪われてしまうことになる。デューイはそう主張しました。そこでデューイは、今日「プロジェクト型の学び」といわれる学びのあり方を提唱したのです。子どもたちの、発見したい、ものを作りたい、表現したい、コミュニケーションしたい、という欲求を、最大限生かした教育のあり方です。
 こうしてデューイは、自らの学校を、子どもたちの興味・関心・生活経験、そして協同活動を中心にした学びの空間として設計しました。それぞれの子どもが、それぞれの関心に応じて、料理や布織りなどをすることができる学校を作ったのです。このデューイの実践および教育理論が、現在の日本の教育にも色濃く影響を与えています。今の日本の学校には、曲がりなりにも、自由研究があったり作業台があったり、また総合的な学習の時間があったりします。しかしまだまだ十分ではありません。何度も述べてきたように、現代における「学力」とは、とどのつまり「学ぶ力」です。とするならば、自ら課題を設定し挑む「プロジェクト型の学び」を、今後もっと学びの中心に置いていくべきでしょう。

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